蟹退治日記 (神経内分泌がん治療記)

ドイツでの神経内分泌がん治療の日々を通して見たこと聞いたこと考えたことを綴っていきます。

2014-01-01から1年間の記事一覧

身軽になる

手術から11日目。 日曜日。今日で11月も終わる。 回診に来たM女医と話す。退院はどれくらいかと訊くと、この調子ならば次の週末には退院できるだろうと言われた。つまりあと6日か7日だ。退屈で死にそうなので、出来ればもっと早く出たいと思う。 この日は腹…

第二エンジン点火

手術から九日目。 思い切って一人でベッドから体を起こしてみる。腹筋は使えないので、これが思いのほか大変。体を横向きにして足をベッドから降ろし、同時に両腕で上半身を起こす。 出来た!これで看護婦さんの助けを借りずに一人で立てる。 しかし腹をかば…

亀の歩み

手術から六日目。 短時間ながら立つ。10秒程度か。夕方ごろに膀胱がいっぱいになっているような感じがあり、看護婦さんを呼ぶ。膀胱カテーテルから排尿しているのだが、チューブが詰まっているとの事。膀胱炎で尿に粒状の不純物が混ざっている。それが原因ら…

回復

手術から三日目。 相部屋のBさんが退院して、この日から一人部屋となった。体調的には相変わらずで、ベッドのへりに座るのがやっとという状態。初めて固形食が与えられた。マッシュポテトと人参。頑張って食べたが、どうにも食欲が湧かない。ああ、お粥が食…

意気地なし

手術を終えて二日目。11月も下旬に入った。 朝の検診でP医師がやってきて、どれどれとお腹の絆創膏をべろっと剥がした。そこには大ムカデがいた。無数のホッチキスできっちりと縫い付けられたそれは、胃のあたりからペニスの手前まで這っている。30センチ弱…

苦痛

手術の次の日。 ICU(集中治療室)にて目を覚ました。昨晩から私についている男性の看護師さんが歯磨き、歯ブラシ、タオルを持ってきてくれる。ベッドのへりに座るように言われ、彼の助けを得て体を起こしかけたが、腹部が痛む。しかし具体的にどこがどう痛…

手術の日

11月中旬の水曜日。 その日は6時半に目が覚めた。7時すぎに男性の看護師さんが手術時に着るべきものを持ってきたので、それに着替える。それからすぐに看護婦さんがやってきて浣腸。午前中の手術なので慌ただしい。腸が空っぽになった頃にベッドごと、麻酔医…

手術前(2)

手術前(1)からの続き。 癌が小さくなったという事は、癌の勢いが弱まっていると考えられる。転移のリスクも減るだろう。加えて、切除する部位も小さくて済む。私の場合、癌患部は肛門に近いところにあり、切除部位が大きければ肛門括約筋も同時に取り去る事…

手術前(1)

11月中旬の月曜日。 ついに手術の日だ。と、はじけんばかりに気合を込めて病院入りしたのだが、着いた途端に、手術は明後日になりましたと告げられ、気合の行き場が無くなってしまった。今日、明日は検査をすると言う。 まあ、仕方がない。とりあえず入院手…

再開します

手術からほぼ一か月経ちました。 体調はまだ万全とは言いかねますが、だいぶ回復してきました。 そろそろブログを再開しようと思います。 テーマがテーマだけに、肛門やら便やら麗しくない言葉がこれまで以上に頻出してきそうですが、また、お付き合いいただ…

生存報告

無事に手術を終えて、今日で3日目です。まだチューブやらなにやらいろいろつながっています。まともにブログを書けるようになるには2週間はかかるかもしれません。とりあえず生存報告と言うことで(^^)v

ひとやすみ

来週早々に手術の予定です。 7月下旬の癌告知から数えて4か月近く。やっとここまで来た、という思いです。早く済ませてしまいたい、とずっと思っていました。これをクリアしないと次に進めませんからね。 手術自体に不安はありませんが、転移が見つからない…

歩く、見る、撮る

10月の中旬から下旬にかけて、私の体調は癌宣告以来のピークとなった。 下痢止めの薬は私の生活を見事に改善してくれた。 腸が小康を得た。便意を感じたらすぐにトイレに駆け込まないとアウト、という状況では無くなったし、トイレに行く回数は劇的に減った…

回復の月

10月も中旬に入ろうかという頃。 体調を医者に報告するために隣町の病院へ。前回の訪問からほぼ一週間後で、体重は微増と言ったところ。それでも体調は確実に良くなってきていた。 白血球数は正常値に戻りつつあった。下血は完全になくなったし、お尻の痛み…

放射線治療終了

10月初旬。ついに放射線治療最後の日を迎えた。 月曜から金曜まで毎日。6週間。車での往復、待ち時間、治療時間を合わせると、毎回2時間半ほどかかっていた。治療とは言え、そろそろうんざりしかけていた。しかし、今日で最後だ。 更衣室でズボンを脱ぐ。技…

足りない白血球

9月中旬。脱毛以外にも抗がん剤の副作用が現れた。 白血球の減少だ。 本来ならば2回目の抗がん剤のタイミングなのだが、白血球数が2000/μl以下になり感染リスクが高まっている。これでは抗がん剤が打てない。3500-9500/μlあたりが一般的な値らしい。放射線治…

坊主頭

9月中旬。抗がん剤を受けてから約2週間経って、その日は来た。 副作用で髪の毛が抜けるというのは知っていたが、抗がん剤後しばらくしても何の影響もない。もしかしたら私はその副作用を免れたかと思った。しかし、その日シャワーを浴びて愕然とした。洗髪時…

タクシー・ドライバー

九月の前半はひたすら放射線治療に通うだけの日々だった。 前回書いたように通院にはタクシー送迎サービスを使った。そして何人かの印象的なタクシー運転手に出会う事となった。 Iさん。女性、50代後半 この人には何度か送迎してもらった。温和な、のんびり…

ドイツの健康保険

放射線治療は隣町の病院で受けるわけだが、車で片道30分はかかる距離だ。 月曜から金曜まで毎日。それを6週間という長丁場。 尻の痛みのせいで私に運転は無理だ。毎回妻に送ってもらうわけにもいかない。妻も日々忙しいのだ。しかしドイツには素晴らしいサー…

治療入院終了

治療入院4日目の朝。 若い看護婦さんに2人の中年の男女がついてきた。どちらも白衣を着てはいるが、手にはクリップボードを抱えている。そして看護婦さんの仕事ぶりを見ながら何やら書き込んだり、時々看護婦さんに質問したりしている。 おそらく看護婦さん…

暇をつぶす

治療入院の三日目。 抗がん剤を再開することになった。前日の件があるので、妻も心配して朝から病院にやってきた。そして点滴を受ける間、ずっと私のそばに居てくれた。妻だけではない。医者や看護婦もちょくちょく顔を出しては、調子はどうだと訊いてくる。…

天国まであと三歩 (2)

天国まであと三歩(1)の続き。 右腕をバシバシと叩かれているのに気が付いた。誰かが目を開けろと言う。 どれくらい意識を失っていたのか分からないが、まぶたを開くと医者3人と看護婦2人が、私のベッドを囲んで立っていた。医者の一人は私の右腕を叩いて静…

天国まであと三歩 (1)

8月下旬。治療入院二日目。 Gさんのイビキのせいで寝不足気味ではあったが、7時頃には目が覚めた。天気は良く、外はすっかり明るい。病室の窓もドアも開け放して、新鮮な空気を入れた。 ベッドでごろごろしているうちに看護婦さんがやってきて脈拍や血圧を計…

治療開始

8月下旬。ようやく、待ちに待った治療が始まった。 放射線治療と抗がん剤の同時スタートだ。 放射線治療 - 週5日x6セット 抗がん剤(シスプラチン+エトポシド) - 週3日x2セット 抗がん剤はアレルギー反応が起こり得るので、最初の3日間は入院して病院の管…

半分ゾンビ

治療が始まる8月下旬までは、家でごろごろと過ごした。 お尻の癌患部の痛みのせいで座ることが出来ない。真ん中に穴の開いたドーナツ状のクッションを妻が買ってきてくれた。痔を患う人のためのクッションで、それを使えば痛みが和らいだが、それでも長時間…

お尻のX

8月中旬に隣町の病院へ転院となった。そこで放射線・化学治療が行われるのだ。 チーフ・ドクターであるK医師から、治療内容とスケジュールについての説明がある。治療開始は8月下旬からだと言う。つまり検査入院から数えて約一か月、これと言った進展が無い…

トイレまでの距離

【閲覧注意:タイトルが暗示するとおり、麗しいお話ではありません】 8月初旬。大腸が本格的に壊れてきた感じがあった。おそらく炎症がひどくなったのだろう。下痢になり、下血の回数は増え、一日に最低でも10回はトイレに行く羽目になった。実際にそれだけ…

伝える (2)

『伝える (1)』の続き 両親、兄、妹達 子供達への説明はそれなりに覚悟は要ったが、自分の両親への説明はそれ以上だった。どちらも元気だが、もう70過ぎの老人だ。余計な心配をかけたくはなかった。 いざ電話で伝えると、母の反応は思っていたよりも落ち着い…

伝える (1)

検査結果が出た時点で、癌にかかった事を周りに伝えることにした。基本的にオープンに。「ここだけの話」みたいな文脈で語られたり、触れてはいけないタブーのように自分自身が扱われるのが嫌だったからだ。 近くに住む友人、知人、お隣さん 最初から伝えて…

選択の余地

7月末日に二日かけてシンチグラムの検査を行った。一回30分程の、横になっているだけの検査である。おかげでたびたび睡魔に襲われた。 それから数日後、8月初旬に検査結果が出た。検査初期から分かっていることも含めれば、下記のようなものである。 他の臓…