蟹退治日記 (神経内分泌がん治療記)

ドイツでの神経内分泌がん治療の日々を通して見たこと聞いたこと考えたことを綴っていきます。

伝える (1)

検査結果が出た時点で、癌にかかった事を周りに伝えることにした。基本的にオープンに。「ここだけの話」みたいな文脈で語られたり、触れてはいけないタブーのように自分自身が扱われるのが嫌だったからだ。

 

  • 近くに住む友人、知人、お隣さん

最初から伝えておけば、いろいろと楽だ。日々働いている素振りが無くても、抗がん剤によって突然ハゲても、周りの誰も不審に思わないし、お互い戸惑う事も無い。

 

  • 会社の上司、同僚、人事

伝えた後の暖かい反応に感激することになった。急に仕事を放り出すことになり、多数の人たちに迷惑をかけたが、ほんの少しだって愚痴を言う人は居なかった(もちろん言われたってどうしようもないが)、それどころか励ましの集合写真を撮って送ってくれた。上司も人事担当者も「心配せずに治療に専念しろ。仕事を失う事は無いよ」と言ってくれた。それを聞いてどれだけほっとしただろう。その背後には企業の法令順守という側面だってあるのかもしれない。そうであっても、だ。

 

  • 娘と息子

私と妻とで伝えた。お父さんは癌なんだ、と言うと息子は泣き出した。娘は息をつめて聞いている。癌だからと言って必ずしも死ぬわけでは無い、病気を治して元気になる人だってたくさんいる、お父さんも頑張って治療するから心配いらないよ、というような事をじっくりと説明した。結果的に二人とも落ち着いて理解してくれたので、ほっとした。

 

その後で聞いた話だが、娘は私の検査入院中に見舞いに来た際に、病室で大腸癌患者向けのパンフレットを目ざとく見つけて「もしかしたら?」と思っていたらしい。大っぴらに目につくところに置いていたわけでは無いのだが、我ながらうかつであった。それはともかく、娘の観察眼と、すぐにはつっこまない思慮にはちょっと感心させられた。12歳ともなると、こちらが考えているよりも大人なのかもしれない。

 

 

それから実家の家族にも伝えたのだが、長くなるので『伝える (2)』に譲る。