蟹退治日記 (神経内分泌がん治療記)

ドイツでの神経内分泌がん治療の日々を通して見たこと聞いたこと考えたことを綴っていきます。

手術前(2)

手術前(1)からの続き。

 

癌が小さくなったという事は、癌の勢いが弱まっていると考えられる。転移のリスクも減るだろう。加えて、切除する部位も小さくて済む。私の場合、癌患部は肛門に近いところにあり、切除部位が大きければ肛門括約筋も同時に取り去る事になると医者から言われていた。そうなると一生ストーマ人工肛門)だ。しかし、今回の検査結果で、自前の肛門を温存できる可能性が高まったのだ。

 

肛門を温存するかどうかは、執刀医であるM女医が手術の際に判断する。最終的にはお腹を開けてみなければ分からない。

 

いかなる場合でも今回の手術では暫定的にストーマを設置することは決まっていた。直腸の一部を切除して縫い合わせるのだが、きちんとつながるまではストーマを通して排便するのが安全だからだ。

 

 

次の日はMRIの検査があった。

これは7月に経験済み。違いがあるとすれば、SOSボタンを持たされたことだ。前回は何かあったら声をかけてくれと言われて、実際にそうしたにも関わらず全く無視されたという経緯があった。それで「ちょっとだけよ」状態に陥ってしまったのだ。もしかしたら他にも似たような事例があって、SOSボタンを導入したのかもしれない。しかしながら、今回は何の問題も無く終了。

 

その日の夕食は抜き。代わりに1リットル以上はある下剤を貰う。暖かい林檎茶で割られていて、とても飲みやすい。下剤特有の味が全くなくて、手違いで看護婦さんが下剤を入れ忘れたのではないかと訝ったが、その後しっかりと効いてきて安心した。

 

深夜、見回りに来た看護婦さんが、あなたに兄弟はいますか?と訊いてくるので、いるけど日本に住んでいますと答えたら、じゃあ他人の空似ね、と言う。どういう事か尋ねると、看護婦さんの近所に私に似ている男性が住んでいるらしい。それはドッペルゲンガーだね、と二人で笑った。どんな風貌の男か見てみたい気持ちもあるが、自分のドッペルゲンガーを見ると死ぬという話もあるのでやめておこう。

 

明日は手術。死ぬわけにはいかないのだ。