蟹退治日記 (神経内分泌がん治療記)

ドイツでの神経内分泌がん治療の日々を通して見たこと聞いたこと考えたことを綴っていきます。

2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

坊主頭

9月中旬。抗がん剤を受けてから約2週間経って、その日は来た。 副作用で髪の毛が抜けるというのは知っていたが、抗がん剤後しばらくしても何の影響もない。もしかしたら私はその副作用を免れたかと思った。しかし、その日シャワーを浴びて愕然とした。洗髪時…

タクシー・ドライバー

九月の前半はひたすら放射線治療に通うだけの日々だった。 前回書いたように通院にはタクシー送迎サービスを使った。そして何人かの印象的なタクシー運転手に出会う事となった。 Iさん。女性、50代後半 この人には何度か送迎してもらった。温和な、のんびり…

ドイツの健康保険

放射線治療は隣町の病院で受けるわけだが、車で片道30分はかかる距離だ。 月曜から金曜まで毎日。それを6週間という長丁場。 尻の痛みのせいで私に運転は無理だ。毎回妻に送ってもらうわけにもいかない。妻も日々忙しいのだ。しかしドイツには素晴らしいサー…

治療入院終了

治療入院4日目の朝。 若い看護婦さんに2人の中年の男女がついてきた。どちらも白衣を着てはいるが、手にはクリップボードを抱えている。そして看護婦さんの仕事ぶりを見ながら何やら書き込んだり、時々看護婦さんに質問したりしている。 おそらく看護婦さん…

暇をつぶす

治療入院の三日目。 抗がん剤を再開することになった。前日の件があるので、妻も心配して朝から病院にやってきた。そして点滴を受ける間、ずっと私のそばに居てくれた。妻だけではない。医者や看護婦もちょくちょく顔を出しては、調子はどうだと訊いてくる。…

天国まであと三歩 (2)

天国まであと三歩(1)の続き。 右腕をバシバシと叩かれているのに気が付いた。誰かが目を開けろと言う。 どれくらい意識を失っていたのか分からないが、まぶたを開くと医者3人と看護婦2人が、私のベッドを囲んで立っていた。医者の一人は私の右腕を叩いて静…

天国まであと三歩 (1)

8月下旬。治療入院二日目。 Gさんのイビキのせいで寝不足気味ではあったが、7時頃には目が覚めた。天気は良く、外はすっかり明るい。病室の窓もドアも開け放して、新鮮な空気を入れた。 ベッドでごろごろしているうちに看護婦さんがやってきて脈拍や血圧を計…

治療開始

8月下旬。ようやく、待ちに待った治療が始まった。 放射線治療と抗がん剤の同時スタートだ。 放射線治療 - 週5日x6セット 抗がん剤(シスプラチン+エトポシド) - 週3日x2セット 抗がん剤はアレルギー反応が起こり得るので、最初の3日間は入院して病院の管…

半分ゾンビ

治療が始まる8月下旬までは、家でごろごろと過ごした。 お尻の癌患部の痛みのせいで座ることが出来ない。真ん中に穴の開いたドーナツ状のクッションを妻が買ってきてくれた。痔を患う人のためのクッションで、それを使えば痛みが和らいだが、それでも長時間…

お尻のX

8月中旬に隣町の病院へ転院となった。そこで放射線・化学治療が行われるのだ。 チーフ・ドクターであるK医師から、治療内容とスケジュールについての説明がある。治療開始は8月下旬からだと言う。つまり検査入院から数えて約一か月、これと言った進展が無い…

トイレまでの距離

【閲覧注意:タイトルが暗示するとおり、麗しいお話ではありません】 8月初旬。大腸が本格的に壊れてきた感じがあった。おそらく炎症がひどくなったのだろう。下痢になり、下血の回数は増え、一日に最低でも10回はトイレに行く羽目になった。実際にそれだけ…

伝える (2)

『伝える (1)』の続き 両親、兄、妹達 子供達への説明はそれなりに覚悟は要ったが、自分の両親への説明はそれ以上だった。どちらも元気だが、もう70過ぎの老人だ。余計な心配をかけたくはなかった。 いざ電話で伝えると、母の反応は思っていたよりも落ち着い…

伝える (1)

検査結果が出た時点で、癌にかかった事を周りに伝えることにした。基本的にオープンに。「ここだけの話」みたいな文脈で語られたり、触れてはいけないタブーのように自分自身が扱われるのが嫌だったからだ。 近くに住む友人、知人、お隣さん 最初から伝えて…

選択の余地

7月末日に二日かけてシンチグラムの検査を行った。一回30分程の、横になっているだけの検査である。おかげでたびたび睡魔に襲われた。 それから数日後、8月初旬に検査結果が出た。検査初期から分かっていることも含めれば、下記のようなものである。 他の臓…

ブロンド娘がやってきた

7月の下旬。私が大腸内視鏡検査を受ける3日前の話なのだが、ブロンド娘が我が家にやってきた。 仔犬のエミー。 我が家には先住犬がおり、その名をモナという。同じ母犬から生まれた、同じ犬種にも関わらず、モナとエミーでは見た目も性格もかなり違っていて…

男たちの沈黙

検査入院三日目。いよいよ最終日。 これまでは気楽な一人部屋状態だったのだが、午前二時に私の部屋に患者が担ぎ込まれてきた。20歳半ばのドイツ人青年。看護婦さんが彼の脈を撮ったり、点滴をセットしたりと慌ただしい中、その新入りとは軽く挨拶だけ交わし…

ちょっとだけよ

検査入院二日目。 今日の検査プログラムはMRIと超音波内視鏡。 まずはMRI検査から。検査台に横になると、技師の若い女性から説明がある。 MRIは音がうるさいが落ち着いて。体が熱くなるがパニックにならないように。 何かあったら声を出してください。隣の部…