蟹退治日記 (神経内分泌がん治療記)

ドイツでの神経内分泌がん治療の日々を通して見たこと聞いたこと考えたことを綴っていきます。

足りない白血球

9月中旬。脱毛以外にも抗がん剤の副作用が現れた。

白血球の減少だ。

 

本来ならば2回目の抗がん剤のタイミングなのだが、白血球数が2000/μl以下になり感染リスクが高まっている。これでは抗がん剤が打てない。3500-9500/μlあたりが一般的な値らしい。放射線治療に通いながら血液検査を行い、一週間ほど様子を見たが改善せず。そこで白血球を増加させる薬を打つ事になった。

 

骨が痛むかもしれません、と医者は言う。骨髄が造血する際に痛みが伴うらしい。お尻が痛いうえに、これ以上痛みを抱えるのは嫌だったがしょうがない。注射を一本打ってもらった。

 

効果はてきめんで、注射後に白血球数は12000μlまで跳ね上がった。そして予告どおりの痛みもあった。骨というよりは心臓が痛むという感じで、座ったり、体を横たえた時にずきっと痛みが走る。胸骨が痛むのだろうと医者は言った。

 

白血球というと、子供の頃にテレビで観たSF映画『ミクロの決死圏』を思い出す。ミクロ化した潜水艇で体内に潜り込み患者を治療するというお話だ。映像化された体内は神秘的な異世界だった。その中で白血球はうねうねと動きまわり、悪役の男を飲み込んでしまう。侵入者を排除するガードマンなのだ。そんな白血球が、私の体の中で大量生産されているかと思うと頼もしかった。多少の痛みは我慢しようという気にもなる。

 

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さあ、白血球は増えたしこれで抗がん剤が打てる、と思ったらそうではなかった。値が安定するまで待てと言う。しかし、日に日に白血球数は再び下がっていった。そして、一週間後にはまた3000μlを切ってしまった。元の木阿弥だ。

 

2度目の抗がん剤は見送り。

それが医者の下した結論だった。リスク大と判断されたのだ。11月半ばに予定されている手術の前に体調を崩しては元も子も無い、という説明があった。そうこうしているうちに9月も末になり、放射線治療もいよいよ終わりへと近づいてきていた。