蟹退治日記 (神経内分泌がん治療記)

ドイツでの神経内分泌がん治療の日々を通して見たこと聞いたこと考えたことを綴っていきます。

日記

肝臓手術 その後

肝臓手術を終え、退院してから三週間経つ。その間の事を書いておく。 <抜糸> 退院から一週間(術後二週間)で抜糸が行われた。正確には縫合に使われているのは糸では無くて医療用ホチキスだ。それを、ニッパーのような器具でペチンペチンと切っていく。大…

肝臓手術 その3

前回の続き <術後5日目> 食事に果物がつくだけで、豊かな気持ちになる。この日は朝昼晩と苺が出た。 食欲はだいぶ回復して、それなりに食べているのだが、出るものが出ない。管もだいぶとれて、一人でトイレに立てるようになったのに、全くの無風状態だ。…

肝臓手術 その2

前回の続き <術後2日目> 朝ご飯。 いつになく豪勢な感じがするのは、果物とゆで卵がついているから。 さて、食事が出来るのは有難いが、ものを食べれば、当然出るものもある。小の方はカテーテルがつながっているから良いが、問題は大の方だ。ビッグなビジ…

肝臓手術 その1

今回の肝臓手術の日々について書いておく。 手術の目的は肝臓内の神経内分泌がんの切除である。 <入院:手術前日> 九月末のある日。入院手続きを終えてすぐに、医者から手術に関しての説明があった。肝臓のどの部分を切除するか、どのようなリスクがあるか…

第二章の終わりとウサギの死

先ほど無事に肝臓の手術を終えて退院してきた。 直腸から肝臓に転移した神経内分泌がんの切除手術だ。22針の開腹手術であったが、回復が早かったため、術後6日目にして退院となった。 去年の11月に直腸と肝臓のがんを切除したにも関わらず、今年の3月には肝…

前進

九月初旬に超音波、CT、MRIなどの検査を行った。抗がん剤の効果を見るためだ。検査結果を待っていたら、MRIで撮り忘れがあったとの事で再検査。なんだかんだで九月も中旬になってから、ようやく検査結果が出た。 抗がん剤(カルボプラチン+エトポシド)がう…

九月の近況

早いもので、去年の7月に癌と診断されてから、いつの間にか一年以上経ってしまっていた。このところブログの更新が滞っていたが、健康上の理由では無くて、仕事の忙しさによるものなので、ご心配なく。 さて近況。 ■ 抗がん剤 半年に渡る抗がん剤治療がひと…

腹巻

今年の春ごろから腹巻を着るようになった。 腹巻と言っても、寅さんやバカボンパパが着ているような昭和フレイバー溢れる見せ腹巻では無く、肌着として着るタイプ。 腹巻は欧米圏でも売られていて、ドイツ語ではNierenwärmer、英語ではKidney Warmerという。…

晴れのち曇り

つい先日、仕事に復帰して以来初めての出張に行ってきた。私の住むドイツ西部からドイツ南部にある本社へ、たかだか飛行機で一時間なのだが、家を出て目的地に着くまでなんだかんだで五時間はかかる。頻便が多少落ち着いてきたとはいえ、不安はあった。 結果…

中間検査

現在抗がん剤を受けているのだが、その効果を見るための中間検査が先日あった。超音波検査と血液検査。検査結果によると腫瘍は若干小さくなり、腫瘍マーカー値も下がっていた。医者曰く、期待していた通りの効果が出ており、抗がん剤は継続するとの事。方向…

もう一つの問題

<注:シモの話です。自己責任で。> 前回の記事では直腸切除、ストーマ(人工肛門)閉鎖後の頻便問題を取り上げたが、もう一つ厄介な問題があるのでついでに書いておく。 それはおならだ。 長くストーマをしていると肛門の括約筋が弱くなる。それでストーマ…

トイレ日記

(注:タイトル通りシモの話。直腸を切った人、これから切る人に向けた参考情報です。) 直腸を切ってストーマ(人工肛門)にして、それからしばらくしてストーマを閉鎖して、排便機能障害でトイレに何度も通うハメになって三ヵ月経つ。 トイレの回数が落ち…

ハゲとヒゲ

一週間程前に抗がん剤の副作用で髪の毛が抜け始めた。以前もそうだったが、それはいきなりやってきてドサっと抜ける。早速髪をバリカンで妻に刈ってもらい、またもや丸坊主になった。それから短く刈った毛も抜け続け、今や立派なハゲ頭だ。前回との違いはヒ…

春よ来い

(注:タイトルに反してシモの話です) 直腸を失うと排便障害という後遺症に直面する。 頻便:一日に何度もトイレに行く 便意切迫:便意を感じたらすぐにトイレに駆け込まないとアウト これらの問題の結果、トイレに間に合わなければ便失禁という事になる。…

約束

入院七日目 典型的な病院の朝ご飯。これにチーズがついたりハムがついたりもする。夕ご飯もほぼ一緒で、暖かい食事が出るのはお昼のみ。 天気が良い日が続く。病院の外もぶらつきたいのだが、不意に便意に襲われるのが怖い。念のため下着の中にパッド(大き…

キレ

<注:シモの話です> 入院五日目 朝の回診時、医者と看護婦におならが出たことを大々的にアピールした。ならば流動食はOKという事で、お昼に香草のクリームスープとプリンが出た。やれ、嬉しや。食事らしい食事をするのは三日ぶりなのだ。 そして午後の遅く…

チューブ

入院四日目 お腹から出ているドレナージのチューブを抜いてくれるよう看護婦さんに交渉した。それが痛みの元凶と考えての事だ。看護婦さんが医者を連れてきて、医者はドレナージの様子から抜いても良いと判断してくれた。 抜くときは痛いだろうなあと思って…

ストーマ閉鎖手術

入院三日目 手術の日。朝9時に準備室に運び込まれた。去年11月の手術では膀胱カテーテルを抜くときに非常に痛い思いをした。それで今回は看護婦さんに、出来ることならカテーテル抜きでやってくれとお願いしておいた。果たして要求は通るだろうか? それから…

術前検査(2)

入院二日目 大腸鏡検査の日は腸の洗浄で始まった。通常ならば下剤を飲むか、浣腸をするか、というところだが、今回はストーマ(人工肛門)から下剤を注入するというアクロバティックな方法だった。 注入する場所が大腸の手前なので即効性がある。10分も経た…

術前検査(1)

2月も中旬に入った頃に、ストーマ(人工肛門)閉鎖の手術があった。 無事に手術は終わり、一昨日退院したのだが、例によって入院の日々を時系列で書いていく事にする。 入院一日目 この日は検査のみ。去年の11月に切除した直腸部位がちゃんとつながっている…

冬の散歩道

今週ストーマ(人工肛門)閉鎖の手術がある。まずは切除した直腸部位がちゃんと接合されているかどうかの検査があって、問題無ければその翌日には手術だ。難しい手術では無く、入院期間は一週間程度だと言われた。 これが終われば癌治療の一つのプロセスが完…

癌の予防(2)

癌の予防(1)の続き。今回は食生活に関して。 国立がん研究センターが発行している小冊子『科学的根拠に基づくがん予防』 に書いてある食生活の改善項目は下記の三つ。 減塩する:胃癌リスクを下げる 果物と野菜を多く食べる:食道癌、胃癌、肺癌リスクを下げ…

癌の予防(1)

直腸と肝臓の癌は無事切除されたわけだが、これにてお終いハッピーエンドと能天気に構えてもいられない。肝臓に転移したという事は、直腸で成長した癌細胞が体内のあちこちに遠征に出たという事であり、今後の転移・再発の可能性は高いと考えられるからだ。 …

開店休業かと思いきや

注:今回もシモの話です。自己責任でどうぞ。 私は回腸ストーマ(人工肛門)保有者だが、大腸も肛門も温存・開通している。それでも排便はストーマを通して行われるので、肛門は開店休業状態になるものとばかり思っていた。だが実際にはそんな事は無く、そこ…

ストーマについて

注:シモの話です。自己責任でどうぞ。 ストーマ(人工肛門)を造設してから2か月になる。ストーマとの暮らしにだいぶ慣れてきたものの、やはり手間はかかる。私のような回腸ストーマだと便は大腸の手前で出てくるので、水分が絞り切れていない水様・泥状の…

猫背

手術からもうじき二か月が経つ。手術直後は体のあちこちが痛んだものだが、いくつかの痛みは今やだいぶ落ち着いた。しかし、なかなか消え去ってはくれない痛みがある。腹部の手術跡の痛みだ。 痛み自体はさほど酷くは無いのだが頻度が高いのだ。よくピリピリ…

術後の治療を巡って(2)

術後の治療を巡って(1)の続き その日はシンチグラム検査日だった。ある書類を提出する必要があり、検査の前に腫瘍科に寄るとG医師が見えた。昨日のK医師と私の話し合いにも同席していた若い医者だ。彼は診察の前なのか慌ただしく書類をめくっていたが、私を…

術後の治療を巡って(1)

退院から一週間後、12月も中旬に入る頃。 手術で直腸、肝臓の癌はすべて切り取ったのだが、他の部位に癌が潜んでいないかを調べるためのシンチグラム検査(正確にはSPECT)が予定されていた。腫瘍科の医者から検査の前日に顔を出すように言われた。彼らが私…

ジーンズを買いに

12月初旬。 手術以来初めて体重計に乗った。手術前と比較して6kgも減っていたので驚いた。胸板が薄くなっている。うっすらとあばら骨も見える。しかし、お腹はぽっこりと出ている。開腹手術で腹筋が弱くなっているせいだろう。ギリシャ彫刻のような私の肉体…

退院の日

手術から14日目。 退院の日。検査入院を含めると入院してから17日目。すでに12月初旬になっていた。 今まで長らくスウェットの上下で入院生活を過ごしてきたが、この日久しぶりにジーンズに履き替えた。フロント部のボタンを下から留めていくと途中できつく…