蟹退治日記 (神経内分泌がん治療記)

ドイツでの神経内分泌がん治療の日々を通して見たこと聞いたこと考えたことを綴っていきます。

もう一つの問題

<注:シモの話です。自己責任で。>

 

前回の記事では直腸切除、ストーマ人工肛門)閉鎖後の頻便問題を取り上げたが、もう一つ厄介な問題があるのでついでに書いておく。

それはおならだ。

 

長くストーマをしていると肛門の括約筋が弱くなる。それでストーマ閉鎖後におならが我慢できずに出てしまうという人が少なからずいるようだ。私の場合はストーマ期間は三ヵ月間と短いこともあり、括約筋は大丈夫だったのだが、おならを我慢すると肛門のすぐ奥の部分が酷く痛むようになった。おそらく腸の吻合部分がガスの圧力を受けて痛むのだろう。この痛みが何度か続くとぐったりする。そして痛みを回避するにはそのままおならを出すしかない。

 

家に居る限りはそれで良いのだが、問題は外で人と会う場合だろう。仕事の打ち合わせや会議中におならが出てしまったら、なんて考えただけで冷や汗が出る。恥じらいというものがなくなってきた中年男性の私ではあるが、悟りの境地に達したわけでも無いのだ。

 

つい先日、病院で受付の列に並んでいた時の事だが、ふいにおならの予感があった。後ろには人が並んでいる。肛門を引き締めおならを我慢することにしたのだが、やはり痛みに襲われた。辛い。ちょっとだけでもおならを出して痛みを軽減しなくては、と思い肛門を緩めたら、「ぱぴっ」という音が出てしまった。とっさに後ろを振り向いて「すいませんね」と微笑んだつもりだが、アルカイックスマイル的なものになっていたかもしれない。私の後ろに立っていたのはおじいさんで、私を無表情に見返していた。受付が終わるまでちょっと気まずかった。

 

手術の後遺症というのは色んな形で出てくるものだ。もちろんおならなんて、生き死にの問題に比べれば些細なものだが、当事者にしてみればそれなりに切実な問題ではある。これからは人に気づかれない放屁、ステルス屁の研究に励もうかと思う。