蟹退治日記 (神経内分泌がん治療記)

ドイツでの神経内分泌がん治療の日々を通して見たこと聞いたこと考えたことを綴っていきます。

術前検査(2)

  • 入院二日目

大腸鏡検査の日は腸の洗浄で始まった。通常ならば下剤を飲むか、浣腸をするか、というところだが、今回はストーマ人工肛門)から下剤を注入するというアクロバティックな方法だった。

 

注入する場所が大腸の手前なので即効性がある。10分も経たぬうちにトイレに駆け込む。そして念のために、という事でもう一度下剤投入。すぐに胃が痛くなってきた。看護婦さんに伝えると、下剤を立て続けに入れたからでしょう、と言う。なるほど、そういう影響もあるのか。しかしそのような知識が得られたからと言って何の救いにもならない。痛みをこらえながらベッドごと検査室に運ばれた。

 

そして検査直前に注射器で麻酔が打たれる。今まで何度か検査や手術で麻酔を打たれたのだが、今回こそはどの時点で意識を失うのか見極めてみよう、と思って麻酔針をじっと見ていた。次の瞬間には私は自分の病室に居た。

 

とっくに検査は終わり病室に運び込まれていたのだ。まるでビデオ編集の如く、検査時の意識と痛みはしっかりと選択・削除されている。あらためて凄いと思う。麻酔というものは人類が手にしたテクノロジーの中でも最良のものの一つだろう。

 

なんて事を考えているうちに昼食の時間になった。オムレツ、マッシュポテト、サラダ。美味くは無い。しかし、しばらくまともな食事は摂れない可能性もあるので、しっかり食べておく。

 

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検査結果をじりじりと待っていたところ、夕方になってようやくP医師がやってきて「明日手術です」と告げた。どうも腸の狭くなっていた部位は大腸鏡では見つからなかったようだ。問題無く大腸鏡が通ったので、腸が物理的に狭くなっているわけでは無いらしい。たまたまレントゲン撮影の時に腸が捻じれたりしたのだろうか?よく分からないが、手術が決まったのは嬉しかった。

 

その晩はiPhoneに入れておいたラジオドラマ『羆嵐(くまあらし)』を聴いた。これは『三毛別羆事件』を題材とした吉村昭の小説『羆嵐』を倉本聰の脚本でラジオドラマ化したものだ。古い作品だが聴いているうちに怖くなって途中で止めてしまった。

手術前夜に聴くべきものではなかったと反省している。

 


ラジオドラマ「羆嵐」 - YouTube