蟹退治日記 (神経内分泌がん治療記)

ドイツでの神経内分泌がん治療の日々を通して見たこと聞いたこと考えたことを綴っていきます。

ちょっとだけよ

検査入院二日目。

今日の検査プログラムはMRIと超音波内視鏡

 

まずはMRI検査から。検査台に横になると、技師の若い女性から説明がある。

MRIは音がうるさいが落ち着いて。体が熱くなるがパニックにならないように。

何かあったら声を出してください。隣の部屋でモニターしていますから。

 

そして技師さんが私の胸部に重みのある保護ジャケットか何かを乗せた後、私の上半身はMRI装置のドーナツ部分にすっぽり押し込められた。

 

「息を吸ってー。はい、止めて」

というスピーカー越しの指示に沿って検査は進んでいった。しかし、一度、あまりに長く息を止めすぎて呼吸が乱れてしまった。そして胸部に置かれた重い物体のせいで不意に息苦しくなった。

 

あ、呼吸が上手くできない、やばいな、と思い、「すいません、止めてください!」と叫んだ。しかし、隣の部屋でモニターしているはずの技師さんからは何の反応もない。話が違うではないか。

 

MRIの音がうるさくて聞こえないのだろうか?

とっさに片足をあげ、ふるふると振ってSOSを出した。カメラか小窓を通してこの状況が見れるはずだ。

 

まさかの無反応。

 

MRI装置は止まる気配もない。自力でMRIから脱出すべきか考えていると、ふいに呼吸が落ち着いた。息苦しさが消えた。騒いだのは時間にして一分もないだろう。結局検査は続行し、無事終了した。

 

検査後に技師さんは何事もなかったのように私をMRI装置から出してくれた。きっと本当に彼女は何も聞かず、何も見なかったのだろう。私の方からもあえてどうこう言うことはなかった。じたばたしたのに、思い切り無視されたのでバツが悪かったからだ。

 

次の超音波内視鏡検査に向かう途中、さっきの片足を上げたポーズは何かに似ていたな、と考えていた。ふと思い出したそれは、加藤茶の「ちょっとだけよ」であった。両手を膝頭に添えていたら完璧だったろう。

 

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途端に笑いが込み上げてきたが、ドリフを知るものが居ないドイツでは、このおかしさは誰とも共有できないのであった。