蟹退治日記 (神経内分泌がん治療記)

ドイツでの神経内分泌がん治療の日々を通して見たこと聞いたこと考えたことを綴っていきます。

肝臓手術 その1

今回の肝臓手術の日々について書いておく。

手術の目的は肝臓内の神経内分泌がんの切除である。

 

<入院:手術前日>

九月末のある日。入院手続きを終えてすぐに、医者から手術に関しての説明があった。肝臓のどの部分を切除するか、どのようなリスクがあるか、と言った具合だ。胆嚢が肝臓の癌部位に隣接しているので、転移リスクを鑑みて、こちらも同時に切除するとの事であった。それから麻酔医との面談。それでその日のプログラムは終了。至って暇だ。

 

ベッドに横になり、普段あまり見ないテレビをつけてみる。『白バイ野郎ジョン&パンチ』の再放送が流れていたので喰いつく。中学生の頃は午後4時からの再放送を熱心に観ていたものだ。主題曲のレコードだって持っていた。しかし今観ると、どうにもつまらないのだ。本気出せ、パンチョレロ。まあ、中学生の頃とは感性が違うのだからしょうがない。 但し、オープニングは今観ても良かった。

 

<手術当日>

11時に手術予定だが、朝8時には準備を済ませて、9時には準備室に運び込まれた。ここで背中にカテーテルを打ち込まれる。硬膜外麻酔というやつだ。そして注射だったと思うが、別の麻酔を受ける。それから目が覚めたら私はICU(集中治療室)に居た。手術は終わっていた。毎回感嘆するのだが、麻酔とは魔法だ。

 

この日はICUで夜を明かすことになる。麻酔の影響か、手術直後はひたすらまどろみの中だ。断続的に眠り、目が覚め、また眠り、夢を見る。時間はゆっくりと流れる。

 

<術後1日目>

経過良好との事で、ICUから入院病棟に戻ることになった。この時にベッド間の移動がある。まずは上体を起こしてから、今いるベッドの縁に座る。看護婦さんから立ってみるように言われる。恐る恐る立つと、めまいはあるがなんとかなった。それから横に準備してあるもう一つのベッドに腰掛けて横になる。移動完了。

去年11月の直腸手術の時と比べて、明らかに痛みもめまいも少ない。これはいける。

 

病室に運ばれてから、自分の体につながっているチューブ類を確認した。

首には二三本、点滴がつながっている。

背中には麻酔カテーテル。痛みがひどい場合はコントローラーのボタンを押して麻酔を増量できる仕組みになっている。

お腹にはドレナージ。体内の余分な血液や体液はここに排出される。

そして尿道カテーテル。見た目が痛々しくて身震いしたが、結果的に言えば、以前の手術で設置した膀胱カテーテルよりも快適だった。横になっている限りは痛みも不快感も無い。

 

この日の昼から食事が出た。消化器の手術ではないので、おならを待つ必要も無い。しかしさすがに食欲が無く、デザートのプリンを食べるのが精いっぱいだった。

 

婦長さんがやってきて、食事に関して何か要望があるか訊いてくれた。和食にしてくれ、まずは梅粥で、と言いたかったのだが、さすがにそれは無理と言うものだ。だから、果物を多めにとお願いするにとどめた。そして、その要望はしっかりと聞きいれてもらう事になった。

 

続く