蟹退治日記 (神経内分泌がん治療記)

ドイツでの神経内分泌がん治療の日々を通して見たこと聞いたこと考えたことを綴っていきます。

ドイツの健康保険

放射線治療は隣町の病院で受けるわけだが、車で片道30分はかかる距離だ。

月曜から金曜まで毎日。それを6週間という長丁場。

 

尻の痛みのせいで私に運転は無理だ。毎回妻に送ってもらうわけにもいかない。妻も日々忙しいのだ。しかしドイツには素晴らしいサービスがあった。病院までタクシーで送迎してもらえるのだ。タクシー代は健康保険でカバーされる。

 

放射線治療を受ける患者のほとんどはこのサービスを使っているようで、病院前には患者待ちのタクシーが常に並んでいる。

 

私はいつもタクシーの後部座席に横になった。これなら尻も痛まない。

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車内では、立てた膝を寄り添う恋人同士に見立てて、恋歌を詠んだ。

というのは全くの嘘で、もっぱらGoogle謹製の陣取りゲームIngressに興じていた。

 

健康保険のありがたみを実感したのは、このタクシーサービスだけではない。

ドイツの社会保険料はかなり高額で今まではそれを不満に思っていたが、病気になりサポートを受ける側に立つとその有難みがよく分かった。ドイツには公的健康保険とプライベート健康保険がある。富裕層はプライベート保険に加入する。私は公的保険の方だ。しかし内容的には悪くない。

 

基本的に治療費は健康保険で全額カバーされる。入院代10ユーロ/日、薬代は別途負担する必要があるが、それくらいで済むならありがたい。今回検査入院で大腸内視鏡、CT、MRI、超音波、シンチグラムなど一通りの検査をしたわけだが、一割負担だとしても結構な額になっていただろう。(ちなみにドイツでも歯の治療の負担額はかなり高い。高額な治療費が怖くて、私はこの3年ほど治療が必要な歯を放置している。)

 

病気で働けなくなっても42日間は会社が給与を満額払ってくれる。それ以降180日目までは健康保険が手取りの67%(2/3)を払ってくれる。正直言って67%では私の家計は回らないが、短期間ならば節約と銀行からの借金でなんとか乗り切れるだろう。

 

もともと大した貯金はなかった上に、今年の4月に帰省して散財してしまったので、財政的には厳しい状態に置かれている。7年ぶりの楽しい帰省だったので後悔は無いし、そもそも後悔したってどうしようもないのだが。

 

私がなすべき事は治療に専念して、出来るだけ早く治癒することだ。180日目以降は健康保険からの支給額は激減するとの事なので、それまでにカタを付けなければならない。

 

宇宙戦艦ヤマトよろしく「家計破綻まであとXX日」という張り紙をすれば、緊張感は高まりそうだが、病気が悪化しそうなのでやめておく。