蟹退治日記 (神経内分泌がん治療記)

ドイツでの神経内分泌がん治療の日々を通して見たこと聞いたこと考えたことを綴っていきます。

治療開始

8月下旬。ようやく、待ちに待った治療が始まった。

放射線治療と抗がん剤の同時スタートだ。

抗がん剤はアレルギー反応が起こり得るので、最初の3日間は入院して病院の管理下に置かれることになった。(それは正しい判断だった事が次の日に分かる)

 

今回も病室は二人部屋だった。Gさんという70歳半ばの男性と相部屋となった。老人だからGさんというわけでは無く、単に頭文字がそうなのだ。背が高く、痩せた、気のよさそうな人だ。彼も大腸癌を患っていて、治療プログラムは私とほぼ一緒である。

 

最初にお決まりの採血や血圧測定、そして鎮痛剤の投与。後で知ったのだが、それは少量のモルヒネであった。あれだけ私を苦しめていた尻の痛みは、その日の午後にはほぼ消えてしまった。驚くべき効き目である。

 

お昼頃に初めての放射線治療。台にうつぶせになり、余裕の笑みで半ケツをさらす。前回のシミュレーションで手順は大体知っているのだ。装置に入るまでは結構待たされたが、放射時間は5分も無く、あっさりと終わる。

 

それから抗がん剤スタート。結果的にほぼ半日がかりで点滴を受ける事になる。抗がん剤以外にも大量に水分を投与されるからだ。腎臓を守るために必要なのだそうだ。

 

 夜の10時過ぎにようやく点滴が終わった。特にアレルギー反応や、副作用による吐き気などは無い。これなら大丈夫そうだな、と思った。そのまま眠ってしまいたかったが、眼が冴えて眠れない。深夜を過ぎると、隣のベッドで寝ているGさんのイビキの猛攻が始まった。か細い声しか出ない老人のあの体から、轟音でイビキが発せられるのがなんだか不思議だった。時々息が止まり、死んだんじゃないかとハラハラするのだが、数十秒後にグォーッと野獣のようなイビキがまた始まり、ホッとしたり、ムッとしたり。なんだかアホらしくなってきた。

 

明日、耳栓を妻に買ってきてもらおう。耳栓替わりのヘッドフォンでクロスビー、スティルス&ナッシュを聴きながら、その夜はなんとか寝入ることが出来た。